山形県の中小企業が人口半減時代にDXで変えるべき3つのこと

DX・生成AIコラム

2050年、山形県の人口は約50万人になると予測されています。

現在の山形県の人口は約101万人ですから、半分以下になるということです。しかも、山形市周辺を除いた地域では、さらに急激な減少が見込まれています。置賜地方の川西町や高畠町は、すでに人口減少が加速しています。

同時に、最低賃金は毎年引き上げが続いています。2014年の680円から2024年の955円まで、10年間で人件費は1.4倍以上になりました。政府は2034年までに全国平均1,500円を目指すと宣言しており、今後も毎年50円以上の引き上げが続く見込みです。

人口は半減し、人件費は上がり続ける。 この二重の圧力の中で、中小企業はどう変わっていけばいいのか。

私はITコーディネータとして、山形県・福島県の中小企業を対象にDX推進計画の策定を支援してきました。この記事では、人口半減時代に中小企業がDXで変えるべき3つのポイントを、飲食業・建設業・製造業の事例を交えてお伝えします。


対象地域・業種: 山形県の中小企業を中心に、南東北の製造業・建設業・飲食業にも通じる人口減少時代のDX論点です。

現場で見る共通点: 人口減少は地域企業共通の環境変化です。業種ごとに違う課題を、データとデジタル化で解きほぐします。

POINT

この記事の要点

変化を直視する

人口減少と賃金上昇を前提に、今のやり方の限界を見ます。

課題を伸びしろにする

飲食業、建設業、製造業の事例から、課題を成長余地として捉えます。

小さく始める

IoTやGoogle Workspaceなど、低コストのIT化から成功体験を積みます。

01 VIEWPOINT

1. 「今のやり方の延長」では生き残れないと認識する

検索キーワードを残しながら、現場で判断しやすい形に論点を整理します。

最初に必要なのは、現状認識を正しく持つことです。

日本政策金融公庫の調査によると、取引先企業のうち約3分の1が「デジタル化に取り組んでいない」と回答しています。この3分の1に入っている企業は、率直に言って危険な状態です。

なぜか。社会は変わるのに、自社だけ変わらないということはあり得ないからです。

消費税は2050年までに20%に引き上げられる可能性がIMFから指摘されています。社会保障費は膨らみ、インフラの維持コストは上がり、人口減少で顧客も従業員も減っていく。この環境の中で、10年前と同じやり方で経営を維持することは物理的に不可能です。

「変化」をどう捉えるか

ここで大事なのは、変化をどう解釈するかです。

グラスに水が半分残っているとして、「もう半分しかない」と思うのか、「まだ半分ある」と思うのか。同じ現実でも、解釈によってその先の行動は全く変わります。

山形県の中小企業を取り巻く課題は確かに山積しています。

  • 少子高齢化と人口流出
  • 都市部との賃金格差
  • インフレによる生産コストの増大
  • 事業承継ができず廃業する企業の増加
  • 人手不足と人材確保の困難

しかし、これらを「うちもダメだ」と捉えるか、「まだまだ伸びしろがある」と捉えるかで、その企業の未来は決まります。

山形県のある経営者がこうおっしゃいました。

「課題があるということは、それを解決したら会社がもっと良くなるということ。課題は伸びしろだ」

DXとは、この「伸びしろ」をデータとデジタル技術で実現していく取り組みです。

IT化とDXの違い

ここで1つ、重要な区別をしておきます。IT化とDXは別のものです。

IT化 DX
目的 正解を探す(業務効率化・生産性向上) 問題を探す(自社はどうあるべきか)
視点 内向き(現状維持の改善) 外向き(顧客・社会のニーズへの対応)
到達点 今やっていることを効率化する 競争上の優位性を確立する

たとえば、飲食店のセルフレジ導入はIT化です。レジの効率は上がりますが、「お客様がレジに来て精算する」という構造は変わっていません。

一方で、ある愛媛県の飲食店では、顧客データを活用して95%の確率で来店予測ができる仕組みを構築しました。これによって、食材の仕入れの無駄がほぼゼロになり、スタッフの配置も最適化されました。これがDXです。

多くの中小企業にとって、まず必要なのはIT化です。 IT化をやり切った上で、次のステージとしてDXに進む。この順番が大事です。


02 VIEWPOINT

2. 自社の課題を「伸びしろ」として捉え直す

検索キーワードを残しながら、現場で判断しやすい形に論点を整理します。

2つ目のポイントは、課題を正しく分析し、解決の優先順位をつけることです。

建設業の事例: VR導入で売上6倍

鹿児島県の建売住宅を手がける建設会社の事例を紹介します。

この会社は、建売住宅の販売にVR(仮想現実)技術を導入しました。お客様がVRゴーグルをつけると、まだ建っていない家の中を歩き回ることができます。間取り、内装、窓からの眺めまで、実際に住んでいるかのように体験できるのです。

結果、売上は6倍になりました。

しかし、ここで注目すべきは「VRを入れたから6倍になった」のではないということです。

「VRが仕事をするわけではありません。なぜVRなのか、なぜその技術が必要なのかを経営理念とともに社員と共有し、みんなが納得した上で行っているから売上6倍になったのです」

この会社の経営者は、「お客様にわかりやすい情報提供をする」という経営理念を持っていました。その理念を実現するための手段としてVRを選んだのです。

ツールが先ではなく、理念が先。理念を実現するための手段としてデジタル技術を選ぶ。 この順番が、DXで成果を出す企業に共通するパターンです。

飲食業の事例: 来店予測95%の精度

愛媛県の飲食店の事例も印象的です。

この飲食店は、過去の来店データ(曜日、天気、季節、イベントの有無など)を蓄積し、分析することで、翌日の来店客数を95%の確率で予測できる仕組みを作りました。

山形県の飲食店経営者にこの話をすると、皆さん驚かれます。

「うちでも95%の確率で来店予測ができたら、仕入れの無駄がなくなるし、アルバイトのシフトも最適化できる。人件費も食材ロスも大幅に減る」

その通りです。しかも、この仕組みは特別な高額システムを導入したわけではありません。日々の来店データを記録し、パターンを分析するという地道なデータの蓄積から始まっています。

製造業の事例: ポストイットで課題を分解する

製造業でよくある失敗は、「課題と解決策を直結させてしまう」ことです。

「無駄在庫が多い」→「在庫管理システムを入れよう」

この思考は危険です。なぜなら、無駄在庫が多い本当の原因は、在庫管理の仕組みではないかもしれないからです。

ある製造業では、ポストイットを使って原因を深掘りしていくと、こんな構造が見えてきました。

  • 無駄在庫が多い ← 発注担当の課長が1人しかいない ← 課長は出張が多い ← 出張中に急な注文が来ると対応できない ← だから多めに在庫を持っておく

本当に必要だったのは、在庫管理システムではなく「課長が出張先からでも決裁できる仕組み」でした。 極端な話、LINEで「OK」と返すだけで解決する問題だったのです。

IT企業は「こんなシステムがあります」と提案してくれますが、自社の課題構造を理解しているのは経営者と従業員だけです。正しい課題認識がなければ、高いシステムを入れても効果は出ません。


03 VIEWPOINT

3. 小さなデジタル化から始めて成功体験を積む

検索キーワードを残しながら、現場で判断しやすい形に論点を整理します。

3つ目のポイントは、いきなりDXを目指さず、小さなIT化から始めることです。

段階的に進める

【マイナスの状態】
  2度手間の作業、余剰在庫、作業ミスによるクレーム、納期遅れ
    ↓ デジタル化による課題解決(IT化)
【普通の状態】
  作業が平準化、品質が安定、納期遵守、在庫適正化
    ↓ 成功体験の蓄積 → 「デジタルツールっていいものだ」という空気
【プラスの状態(DX)】
  業界の常識を覆すスピード、他社が真似できないサービス、顧客からの圧倒的な支持

多くの中小企業は、まだ「マイナスの状態」にいます。手書きの管理台帳、ExcelのコピペやFAXでのやりとり、個人パソコンに散らばったデータ。まずこの状態を「普通の状態」に引き上げるのがIT化です。

IT化をやり切って初めて、「じゃあ次のステージに行こう」というDXへの挑戦が現実的になります。

IoTは数千円から始められる

製造業の経営者に「IoTで品質管理をしましょう」と提案すると、「何百万もかかるんでしょう」と言われることがあります。

実は、IoTセンサーは1個数千円です。温度センサー、気圧センサー、重量センサーなど種類も豊富で、Wi-Fi接続で携帯電話がなくてもデータを蓄積できます。

山形県の工業技術センターでは、IoTのテストベッド(試験環境)を無料で提供する事業を実施していた実績もあります。こうした公的支援を活用すれば、自己負担ゼロでIoTの「お試し」ができます。

Google Workspaceは月額680円から

飲食業やサービス業であれば、まずGoogle Workspace(月額680円/人)でデータの一元管理を始めるのが現実的です。顧客情報、シフト表、売上記録をクラウドに集約するだけで、「あの資料、○○さんのパソコンに入ってるんですけど」という問題がなくなります。

同友会・公的支援のネットワークを活用する

山形県の中小企業にとって、DXへの近道は仲間と情報を共有することです。

中小企業家同友会のメールマガジンや中小企業家新聞には、飲食業の来店予測95%の事例や、建設業のVR導入で売上6倍の事例など、実践的なDX事例が豊富に掲載されています

さらに、同友会のネットワークを使えば、実際にDXに成功した企業を訪問して「どうやったんですか」と直接聞くこともできます。これは、コンサルティングファームに高い費用を払わなくてもアクセスできる、中小企業ならではの強みです。


04 SUMMARY

まとめ — 変化をチャンスに変えるために

記事全体の要点を、次の行動につながる形で整理します。

山形県の中小企業が人口半減時代にDXで変えるべき3つのポイントをまとめます。

1. 「今のやり方の延長」では生き残れないと認識する

人口半減・賃金上昇の二重圧力は物理現象。IT化とDXを区別し、まずIT化から取り組む。デジタル化に取り組んでいない3分の1に入らない。

2. 自社の課題を「伸びしろ」として捉え直す

建設業のVR導入で売上6倍。飲食業の来店予測95%。製造業のポストイット分析。いずれも、課題を正しく分析し、経営理念に基づいてデジタル技術を選んだから成果が出た。

3. 小さなデジタル化から始めて成功体験を積む

IoTセンサーは数千円。Google Workspaceは月額680円。いきなりDXを目指さず、小さなIT化から始めて「デジタルっていいものだ」という空気を社内に作る。

変化の時代に、ビールのコップが半分になっても「まだ半分ある」と捉える。 その解釈から始めてみませんか。


05 ISSUE

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